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夏から初秋の薬用植物

7月・8月・9月頃の夏から初秋にかけて見られる薬用植物をご紹介いたします。

【ヒイラギ】アヤメ科 ヒオウギ属

写真①
写真①
写真②
写真③
写真③

ヒオウギは日当たりのよい山地の草原に生える多年草ですが、観賞用に栽培され庭先で見ることもできます。

8月頃橙色に赤い斑点のある一日花(写真①)が次々と開きます。

アヤメ科でもアヤメやカキツバタのようなアヤメ属の花は、外側の花被片と内側の花被片の大きさや形が異なりますが、ヒオウギは同形同大で平開します。

花は1日で閉じてしまうため、写真②のように咲き終わると自ら強くねじれ確実な受粉を果たしていきます。

写真④
写真④

葉の並び方(写真③)がヒノキの薄い板をとじ合わせた扇のような形をしているので檜扇ヒオウギと名付けられました。

花後、緑色の果実は秋になると熟して割れて写真④のような黒い種子が現れます。種子は球形で黒く光沢があり、「ぬば玉」「うば玉」と呼ばれています。

その漆黒さはあまりに黒いので、万葉集では黒とか夜を意味する枕詞として使われています。

ヒオウギの根茎は生薬名射干やかんといい、咽頭痛・咳嗽・喀痰などに用います。

漢方処方では射干麻黄湯やかんまおうとうに配剤され、コロコロ・ゼロゼロ・ヒューヒューと鳴らす喉頭炎や気管支喘息や肺気腫などに使用されます。

【ヤマノイモ】ヤマノイモ科 ヤマノイモ属

写真⑤
写真⑤
 
写真⑥

ヤマノイモは別名自然薯ともいい、山野にふつうに生えるつる性の多年草で栽培もされています。

根茎(担根体)は細長く粘り気が強いため食品でトロロイモとしてお馴染みです。

葉(写真⑤)は三角状披針形で基部は心形で先は長く尖り、茎に対生につきます。

山野に行くと葉の形がよく似た同じヤマノイモ属でオニドコロ、タチドコロなどを見かけますが、葉のつき方が互生です。対生につくヤマノイモとの鑑別になります。

ヤマノイモは雌雄異株で、8月頃雄花序(写真⑥)は葉腋から直立した白い小さな花を多数つけますが、開きは少なくほぼ球形です。

写真⑦

雌花序(写真⑦)は葉腋から垂れ下がり、緑色の子房がついた白い小さい花をまばらにつけます。

子房に翼があり、成熟すると翼が大きくはりだし、蒴果さくかをつくります。

種子が弾けた後のカラカラに乾いた茶色の翼(写真⑧)を冬枯れの山野でよく見かけます。

9月頃になると葉腋にムカゴ(写真⑨)がしばしばつきます。

写真⑧

ムカゴは茎の一部が丸く太ってできたもので、土の中の芋が出来るのと同じ仕組みです。

地面に落ちた後、芋と同じに芽を出すこともできて、味も似ていておいしく食べることもできます。

写真⑩は同じヤマノイモ属のナガイモで、中国原産のつる性の多年草です。古い時代に渡来し、食用に栽培されていて、ときに野生化したものも見られます。

写真⑨

サクサクして粘りけもヤマノイモより少なく、スーパーで売られているトロロイモは一般にナガイモです。

葉は厚く、基部が左右に大きくはりだしているところがヤマノイモとの違いです。

ナガイモの芋はいろいろな形のものがあり、円柱形のものをナガイモ、塊状のものをツクネイモ、扁平なものをイチョウイモなどと呼んでいます。

写真⑩

成分は多量のデンプンと粘液質のマンナンのほか、糖類やアミノ酸などが含まれています。

ヤマノイモまたはナガイモの根茎(担根体)を生薬名山薬さんやくといい、健胃作用や滋養作用があります。

頻尿・腰痛など比較的高齢者に多用される八味地黄丸はちみじおうがんに山薬が配剤されています。

 

 

【タケニグサ】ケシ科 タケニグサ属

写真⑪
写真⑪
写真⑫
写真⑬

タケニグサ(写真⑪)は梅雨入り前からグングン成長して、7月頃には1~2メートルにもなる大型の多年草です。日当たりのよい荒れ地や道ばたでよく見かけます。

茎や葉は全体に扮白を帯び、茎が中空で竹に似ているからタケニグサといいます。

葉は大型で菊の葉のように裂け、この曲線からなる葉の全形は美しいのでよく図案化されていろいろの模様として利用されます。

写真⑭

写真⑫のようにタケニグサの花は花弁がなく、約1センチの多数のオシベが白く美しく花弁のように見えます。

果実(写真⑬)は2.5センチほどの細長く扁平で、未熟のときは黄赤褐色の乳液でみたされていますが種子ができるとこの乳液はなくなり、果実を手折って振るとカサカサと音がしてなかなか面白いです。

茎や葉を切るとでる黄赤褐色の乳液(写真⑭)は有毒アルカロイドのプロトピンを含み、かつてはウジ殺しの目的で便層に入れたりしました。

【ウコン】ショウガ科 ウコン属 別名:秋ウコン

写真⑮
写真⑯

ウコンは熱帯アジア原産で、日本でも沖縄や九州の南方の島々などで栽培されているショウガ科の多年性草本です。相模原市旧津久井でも畑で栽培しているウコンを見かけます。

写真⑰

写真⑮⑯はウコン(秋ウコン)で8~9月頃淡緑色の花を咲かせます。それに対して写真⑰は春ウコン(姜黄)といい5~6月頃ピンクの花を咲かせ、秋ウコンとは同属ですが別種です。

ウコンの花をよく見ると、花弁のように見えるのは淡緑色の苞葉で、本当の花は下部の黄色い部分です。春ウコンもピンクの苞葉の下に花があり、黄色い花弁(写真⑱)が3つに分かれています。

写真⑱

根茎から巻くようにして長さ60㎝ほどの葉茎(偽茎)を伸ばし、厚みがあって両面つるつるとした深い葉脈のある大きな葉を互生につけます。

ウコンの根茎が局方の生薬名鬱金ウコンで、精油ターメリンのほかに黄色色素クルクミンを含有し、抗炎症作用や利胆作用があります。

根茎の皮を除いて乾燥し粉末にしたものが香辛料のターメリックで、カレー粉の黄色の主原料として用いられ、また沢庵やピクルスの着色料としても用いられています。

また健康食品として最も多く利用されています。

漢方では腫れ物の初期や打ち身・捻挫などに使われる中黄膏に鬱金末が配剤されています。

春ウコンは秋ウコンに比べ強い苦みと辛さがあるため食用には不向きで、生産量もあまり多くありません。

写真⑲

他にウコンと同属別種のガジュツ(別名 ムラサキウコン・写真⑲)があります。

ガジュツの根茎が局方の生薬名莪朮ガジュツです。

花は春ウコンと同じ頃に咲きますが、葉の主脈が赤紫色で(写真⑳)、根茎の断面も青紫色をしています。

ちなみに秋ウコンの根茎断面は黄褐色で、春ウコンの根茎断面はうすい黄色をしています。

写真⑳

莪朮には鬱金の主成分であるクルクミンが含まれていなく、シネオールなどの精油が含まれ芳香性健胃薬として胃腸薬の原料に、また肝疾患の治療にも用いられています。

また止痛作用もあり、漢方薬で頑固な肩こりに使われる治肩背拘急方じけんぱいこうきゅうほうに配剤されています。

 

 

                                       会員 熊井啓子

公益社団法人
相模原市薬剤師会
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